トイレ小噺『徳川将軍のトイレは冷暖房完備?』

 徳川将軍のトイレは、雲隠とか厠(かわや)などと呼ばない。御用所という。江戸時代の御用所こそ、江戸時代最高権力者のトイレであり、もっとも贅沢なものだった。それはどんなだったか?江戸城大奥の将軍用トイレ、御用所を見てみよう…。

 将軍の御用所、つまりトイレは四畳半の総檜造り。この四畳半を中ほどで仕切り、前半の二畳に御殿女中がかしこまって控え、後半の二畳敷の中央に便器があった。将軍ともなると、トイレのときも孤独にはなれない。

 便器は白木の箱で、長さ約85センチ、幅約45センチ、高さ約90センチ。かなり大きな長方形の箱で、引出しがついている。この引出しに便が落ちる仕掛けで、一回ごとに引き出しを抜いて、中身を洗っておく。
 将軍は踏み台を踏んで、この箱の上に上って、しゃがみ込む。
 90センチの高さだから、控える御殿女中を眼下に見下ろすことになる。

 将軍が踏ん張っている間、冬なら箱の一方に火鉢を仕込む。尻からお風邪を召さないように、ちゃんと暖房付きになっていた。

 夏の場合は、クーラーの代わりに御殿女中が扇子であおぐ。そよそよとそよぐ扇子の風が、暑さと蚊を追い払う。ただし、あくまでも、そよそよと…。乱暴にあおぐと、あおった風は異臭をともなって自分の方へ戻ってくる。で、彼女たちは注意深く扇子を使った。

 かくて、無事ご脱糞なされると、後始末。将軍自ら紙を揉んで、片手を尻にまわして、というせこいことはしない。御殿女中が軟らかく紙を揉んで将軍の尻を拭った。以上が将軍のトイレ。

 
投稿日:2010/4/16